PR 暮らしのヒント

暴落から身を守るために~『バブルの物語』の知恵

2018年1月29日

顔のない紳士

この記事はこんな人におすすめ

  • バブルがなぜ起こるか知りたい人
  • 暴落から身を守りたい人
  • 『バブルの物語』を読んでみたい人

暴落はまた起こるのでしょうか?いつ、起こるのでしょうか?次にやって来る暴落は、世界経済を崩壊させるほどの規模となるのでしょうか?

 

そんな疑問の答えを知るために『バブルの物語~暴落の前に天才がいる』を読みました。

資本主義が本格的に発達してきた18世紀以降、「バブルと暴落」は何度も繰り返されてきました。本書はその繰り返された物語の幾つかを紹介しています。

そして、なぜ何度も「バブルと暴落」は繰り返されるのか、またそれを防ぐ手立て、予知する方法はあるのだろうかを語っています。

 

著者、ジョン・ケネス・ガルブレイスについて

著者のジョン・ケネス・ガルブレイスは20世紀を代表するアメリカの経済学者です。出自はカナダの農家の子息ですが、1937年に米国市民権を獲得しています。

ハーバード大学経済学部教授やアメリカ経済学会会長を務め、 その業績と人気から経済学の巨人と呼ばれていました(身長も2メートルで大きかった)。

この本は1990年にアメリカで初版が出版、1991年にダイヤモンド社より邦訳が出版されています。2008年に同じくダイヤモンド社より新版が出されています。(1991年版を読みました。)

世界的な経済学者による本ですが、専門書ではなく一般向けに出版された著作です。

著者自身が本書のことを「長いエッセイ」と言うように、「この本のおかげで(暴落で)お金を損せずにすんだ」と思ってもらえるよう気軽な読み物として執筆された著作です。

お硬い経済学的な分析などは無く、歴史上のさまざまな「バブル」を紹介していく、という内容になっています。

17世紀のオランダのチューリップバブルからはじまり、18世紀のフランスのジョン・ロー事件、同じく18世紀ロンドンのサウスシー・バブルそして米国での1929年の大恐慌といった「バブルの物語」が語られています。

重要キーワード1、「ユーフォリア(陶酔的熱狂)」

原題は”A Short History of Financial Euphoria;Financial Genius is Before the Fall”です。直訳すると「金融的ユーフォリアに関する短い物語;暴落前は金融の天才である」でしょうか。

『ユーフォリア』とは馴染みのない言葉です。翻訳者によると日本語に訳すのは難しい言葉であるとのこと。本書では「陶酔的熱病」などと訳されて、重要なキーワードとして繰り返し出てきます。

多くの人々が欲に目がくらんで通常の判断力を失い、盲信的に金融商品の値上がりを信じ、投機的行動につき進んでいく・・・そのような状態をあらわす言葉として使われています。

『ユーフォリア』とはバブルの最中(さなか)に見られる「理由のない集団的な熱狂」なのです。

重要キーワード2、「てこ(レバレッジ)」

ガルブレイスはバブルを引き起こす重要な要因として、「てこ(レバレッジ)」の存在をあげています。本書で述べられたいくつかの例を以下に紹介します。

  1. 借金をして投機的商品(チューリップの球根)を買う「てこ」
  2. 銀行が保有している金貨・銀貨以上に紙幣を発行する「てこ」
  3. 支払った証拠金以上の何倍もの株式を買うことのできる「てこ」

これらは現在の金融システムでは信用取引であったり、部分準備金制度であったり、証拠金取引であったりと、一般的なものになります。しかし、当時は革新的なアイデアとして人々を投機的熱狂に巻き込んでいく原動力となったのです。

風船を持つ人

バブルはなぜ起こる?

また、バブルを発生させる心理的な要因として、ガルブレイスは次の2点をあげています

  1. 金融に関する人々の記憶は極端に短く、以前のバブルに関することをすぐに忘れてしまう。
  2. 富を得た人や富を得る手法に長けた人は賢明で知性に溢れていると信じられている。

ガルブレイスによれば、人々は20年もすれば以前の暴落とその痛みの記憶を忘れ去ってしまうものだということです。そして、あらたな「てこ」の要素を含んだ革新的な金融システムのアイデアが、富を得る手法に長けた天才によって発明され、ユーフォリアが繰り返されるのです。

暴落への心構え

暴落から身を守る

著者は暴落から身を守るには高度の懐疑主義が必要だと述べています。興奮や楽観的ムードが市場に拡がった時はその渦中に入らないことが賢明であると教えてくれます。

暴落を予知する

次の暴落はいつ来るのでしょうか、そしてどのような姿で訪れるのでしょうか?

ガルブレイスからは「誰にも分からない、答えようとする人は自分の無知がわかっていないのだ。」と、読者を突き放したような言葉しかありません。

しかし、これこそが唯一の正しい答えなのではないでしょうか。

また暴落はやって来るのか

ガルブレイスは2006年に老衰のため死去、享年97歳でした。

その逝去の2年後にリーマン・ショックは発生しました。

リーマン・ショックによって引き起こされた世界的な信用収縮を立て直すために、各国の中央銀行が発行したマネーの総額はおおよそ2,000兆円と言われています。増発されたマネーはそれ自体が超巨大な「てこ(レバレッジ)」となり世界的な株高=資産バブルを生み出しています。

この超巨大な「てこ」は、「バブルの物語」のひとつとなるのでしょうか?

それを予見するのは困難なことでしょう。

ひとつだけ、確かなことがあります。

ガルブレイスは次のように述べています。

「投機のエピソードは常にささやきではなく大音響に終わる」

いつか必ず、またどこかで暴落の音が響きわたることでしょう。

目次の紹介です。

目次

1 投機のエピソード

2 投機に共通する要因

3 古典的なケース1 チューリップ狂、ジョン・ローとロワイヤル銀行

4 古典的なケース2 サウスシー・バブル

5 アメリカの伝統

6 一九二九年の大恐慌

7 再び一〇月がやって来た

8 教訓は歴史から


新版 バブルの物語

新版 バブルの物語

ジョン・ケネス・ガルブレイス
1,600円(02/19 08:58時点)
Amazonの情報を掲載しています

おまけ:出版社さん、次は新訳お願いします。

『バブルの物語』は暴落後のタイミングで2度出版されています。

1991年版『バブルの物語―暴落の前に天才がいる』(1991年5月)
→バブル崩壊(日経平均は1989年12月29日の38,915円をピークに下落、1990年10月1日には一時20,000円割れまで下落)

2008年版『新版 バブルの物語―人々はなぜ「熱狂」を繰り返すのか』(2008年12月)
→リーマンショック(2007年からのアメリカ債権市場におけるサブプライム住宅ローン危機、2008年9月リーマン・ブラザーズが経営破たん)

本書はわたしの読解力の無さのせいか、それとも翻訳者の力量不足なのか、非常に読みづらい文章が多いように感じました。直訳的な和訳が多く、特に金融に関する専門的な記述になるととたんにわかりづらさが増します。柔らかめの著書であるはずなのに、翻訳が硬いように感じます。

何度読み返しても意味がよくわからない箇所もあります。原書で書かれているであろう単語を推測して読み進めないといけないような部分があったり…(例えばp40の「負債創造」なる言葉は聞いたことがありません。「信用創造(credit creation)」のことなんでしょうか?)。

次の出版の機会があれば、ぜひとも新訳でお願いします(また暴落があれば出版されるかな…)。

 

三体

2020/6/23

『三体』の読書感想文~中国発の超絶妄想伝奇的SF小説

中国発のSF小説『三体』を読みました。とんでも妄想小説、むちゃくちゃ面白い小説でした。あらすじや面白ポイント、魅力などをネタバレなしでレビューします。

ReadMore

目隠しする女の子

2018/1/29

【書評】『東京と神戸に核ミサイルが落ちたとき所沢と大阪はどうなる』

核兵器を持った敵国が、日本に核攻撃を仕掛けるならどの都市を狙うのか、またどれほどの被害が想定されるのか・・・ この本は主に中共(中国共産党が支配する中華人民共和国)を仮想敵国として、彼らはどのような状況になった場合に日本を核攻撃するのか。そしてどのような思考にもとづいて核ミサイル発射を決定するのかを論じています。   タイトルは刺激的だが、内容はすごくまじめ 一瞬、トンデモ本か?と思わせるほど刺激的なタイトルですが、中身は大変まじめです。正統派軍事解説本といった内容です。著者の兵頭二十八(ひょう ...

ReadMore

水滴

2022/10/6

文系でも量子論が分かる!本当にやさしいおすすめ入門書4冊+α

物理も数学も超苦手な文系でもわかる量子論の入門書を紹介します。難しい数式が出てこないもの、まったくの素人でも楽しく読み進められるものばかりをピックアップ。不思議な量子の世界を知りたい人は参考にしてください。

ReadMore

群衆

2020/8/21

パンデミックという宿命~『感染症と文明―共生への道』の読書ノート

『感染症と文明―共生への道(山本太郎著、岩波新書)』のブックレビューです。人類と感染症とのかかわりを古代文明からひもときながら論じています。読みやすい文章で書かれた良書でした。

ReadMore

南北統一

2018/6/13

金正恩と北朝鮮のミニ知識、どうしてデニス・ロッドマンと仲良しなのか

デニス・ロッドマンがシンガポール訪問、なぜなの? 史上初の米朝会談のニュースが大きく報道されています。 そんな一連のニュースの中で、デニス・ロッドマンがシンガポールを訪問というのがありました。 デニス・ロッドマンの訪問について、「金正恩委員長と親交があるアメリカの元プロバスケットボール選手です。」とさらっと伝えてました。 でもなんで元プロバスケットボール選手と金正恩委員長が仲良しなのか不思議ですよね。 その答え、北朝鮮と金正恩のミニ知識 ハイ、その答えは~ 金正恩委員長、バスケットボールが大好きなんです! ...

ReadMore

赤ちゃんの足

2018/11/13

すこやかに老いるための筋トレ~『百歳まで歩く』の理論と実践

中高年以降に本当に必要な筋トレって何でしょうか。筋肉もりもりやダイエットを目ざすのではなく、日常生活に必要な筋肉を維持し続けることが大切です。「百歳まで歩く」は簡単で負担の少ないトレーニング法、正しい姿勢での立ち方・座り方・歩き方がわかる本です。

ReadMore

2019/7/16

量子コンピュータとは?文系でも分かりやすいおすすめ入門書3冊+α

物理や数学が超苦手な文系人間でも楽しめる量子コンピュータの入門書を紹介します。できるだけ数式の使われていない本をピックアップ。量子コンピュータってそもそも何?今までのコンピュータとどう違う?何ができるの?を知りたい方は参考にどうぞ。

ReadMore

SNSシェアの吹き出し

\ シェア・ブクマ大歓迎! /
面白かった、役に立ったと思ったらシェアよろしくです♪

  • この記事を書いた人

オクラ

当ブログの管理人。大阪在住のアラフィフおやじ。 資格取得、お出かけ情報、暮らしの知恵などを発信中。老後の趣味にして、ヨボヨボになるまでやるつもり。末永くよろしくお願いいたします。

人気記事

読書するひと 1

図書館で勉強すると静かで勉強がとてもはかどります。大阪には自習可能な図書館が多くあります。自習の情報をメインに大阪の図書館の充実ぶりをご紹介します。定期試験・受験・資格などで勉強中の方はぜひ参考にしてください。

クレジットカード 2

利用しているカードに使った覚えのないAmazonからの500円の請求がありました。カード会社からの連絡で不正利用であることが判明。カード情報漏洩の原因と対策をまとめました。身に覚えのない請求がある方は参考にどうぞ。

火気厳禁 3

危険物取扱者乙種4類は人気の資格です。受験を考えているけど、合格率が30%台と低くて不安に感じるかもしれません。でも合格率の低さには秘密があるんです。まじめに勉強すれば確実に合格する資格だということを説明いたします。

夜明けの道 4

大阪から東京まで自動車で家族旅行をしました。新幹線より交通費が安いので、出費をおさえるためです。深夜に高速道路を長距離・長時間移動しましたが、メリットやデメリット、注意点をまとめています。長距離ドライブを予定されている方は参考にどうぞ。

ストリングアート 5

シェードを上げ下げするための紐(ボールチェーン)がぶちんと途中で切れてしまいました。自分で交換修理した時の手順を写真付きで紹介いたします。部品の購入先や交換時のコツもありますので参考にどうぞ。

-暮らしのヒント
-, , ,