この記事はこんな人におすすめ
- パンデミックに不安を感じている人
- 感染症についてか書かれた良書を探している人
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が世界各地で流行しています。
日本でも本日(2020年4月7日)、7都府県(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡)で緊急事態宣言が発令されました。
以前読んだ『感染症と文明―共生への道』という本のことを思い出して、気になったのでメモした読書ノートを読み返してみました。
読書ノートに加筆してのレビューです。
(面白かった本は、感想や気になった点を記録しています。)
2年ほど前に読んだ本、読書ノートの記録と頼りない記憶からになりますが、ご紹介いたします。
著者はお医者さん、でも医者らしからぬ雰囲気が

著者は山本太郎という方です。政治家の山本太郎さんと同姓同名ですが無関係。
肩書は長崎大学熱帯医学研究所教授とのこと(2011年6月の出版時点)。
熱帯医学とはどのような学問かはわかりませんが・・・
長崎大学のホームページを見ると、氏が率いる国際保健学分野という研究室は、「国際貢献から環境疫学、統計学、生態学に進化生物学まで多様なアプローチで熱帯病の研究に取り組んでいます。」とあります。
非常に学際的な分野のようです。
専門は国際保健学、熱帯感染症学、アフリカやハイチなどで感染症対策に従事されていたとのこと。
まさに感染症対策の実践者で専門家です。
あとがきには「東北の震災直後より被災地に入り、緊急支援活動を開始した」とあり、研究者というよりは社会活動家あるいは行動的な学者という印象を受けました。
本書には「ギルガメッシュ叙事詩」(古典中の古典、普通の人は読みません。もちろんわたしも未読。)や犬養道子さんの「人間の大地」からの引用があったりと、広い教養がうかがわれます。
山本氏ですが、(いい意味で)ホンマに医者かいなと思わせるほど達者な文章力の持ち主です。
難しくなりそうなテーマを分かりやすく教えてくれます。
行動的な学者、学際的な研究分野という背景からでしょうか、なにやら文化人類学者的な雰囲気も漂う人物です・・・
人類と感染症とのかかわり

『感染症と文明―共生への道』は内容的には文明と感染症の関係について述べた本、となります。
専門的になり過ぎないように書かれた、とても読みやすい良書です。
古代からの歴史をひもときながら、感染症と人類のかかわりが述べられていきます。
「先史時代は不健康な時代ではなかった」というのがまず驚きでした。
移動生活をしていたことや、集団が形成されていなかったことが不健康(=不衛生)ではなかった要因です。
人口集団の形成がパンデミックのはじまり
感染症と人間のかかわりの転換点となったのが「農耕の開始、定住、野生動物の家畜化」とのこと。
「農耕・定住・家畜」を引き金に、感染症が広がっていきます。
理由は以下のとおり
- 農耕→余剰食糧→ネズミ、ノミ、ダニによる感染症の広まり
- 定住→居住地の周囲に集積された糞便による広まり
- 家畜→家畜由来の感染症の流行
家畜由来の感染症の例として、イヌの麻疹(ハシカ)、ウシによる天然痘、アヒルが介在するインフルエンザなどがあげられていました。
そして、感染症が流行を繰り返すもっとも大きな要因となったは、人口増加による「人口集団」の形成です。
本書では、メソポタミア文明での麻疹の流行を一例としてあげていました。
約10万人の人口集団があったからこそ麻疹は恒常的に流行することができた
奈良時代にもパンデミックがあった
本書に記述はありませんが、奈良時代の日本でも天然痘の流行により平城京で大量の死者がでたという歴史があります。
平城京という密な空間が原因のひとつだったのでしょう(おおよそ4.5km四方の都に約10万人が生活していたと推定されています)。
ちなみに、この天然痘により、当時の権力の頂点であった藤原四家の当主が全員死亡しています。
↓奈良時代の天然痘によるパンデミックを描いた歴史小説
↓奈良好きのオクラが受検した奈良検定の記録
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感染症との共生が人類の宿命

感染症との共生なくして人類の未来はない
本書は学問的、経験的な裏付けがベースになっており、安心して読みすすめることができます。
非常に落ち着いた筆致で、妙なあおりや不安がらせるような記述はありません。
感染症と人類のかかわり方に対して著者は次のように述べています。
「共生とは、理想的な適応ではなく、決して心地よいとは言えない妥協の産物なのかもしれない」
「心地よくない妥協の産物だとしても、共生なくして私たち人類の未来はないと信じている」
これらの言葉は、一読するとあきらめにも感じられるかもしれません。
私たち人類には、進化の過程で得た多様性や免疫力という生物学的な防御力があります。
また、科学の発展による疫学的な知識や医療という戦う力もあります。
科学者である著者ですから、もちろんそれらの力を知っての言葉ということになります。
「共生なくして私たち人類の未来はない」
これは、決してあきらめの言葉ではなく、人間の力強さを信じる著者からの大きなエールなのではないでしょうか。
人と人とのつながりこそが人間の強さ
文明という人口集団が感染症を流行させる根本的な原因であれば、人類にとって感染症は宿命ということ。
しかし、人口集団が感染症を引き起こす要因であったとしても、私たちは文明を捨てることはできません。
奮闘し続ける医療従事者や助け合う人たちのニュースが多くあります。
捨て去ることのできない人と人とのつながりこそが、私たち人間の強さなの源なのです。
新しいウィルスへの適応はすぐにはできません。長い期間を要するでしょう(年単位?)。
新たな感染症も、いつか必ず発生します。
感染症が共生せざるを得ない宿命だという事実を受け入れる。
そして傍若無人とならないよう、冷静に行動する。
読書ノートを読み返して、
こんな時こそ他人を思いやる心が大切だ
ということにあらためて気づかされました。
一日も早く、世界が平常を取り戻すことを願います。
新型コロナウイルスの影響で価格高騰中
レビューをするのに再読しようと本棚を探したのですが見つかりませんでした。
多分、図書館で借りて読んだ本なのかな。
購入しようかと思って、Amazonで見てみると・・・
むっちゃ高いやん!新書なので700円くらいのはずが、2,500円もします(2020年4月7日時点)
マスクや消毒液なみの価格高騰。
こういうのが、Amazonの困ったとこですねぇ。
楽天ブックスでは正規の値段720円+税で購入可能です。送料無料です。
岩波書店のサイトからも購入可能です。ただし送料650円が必要です。在庫僅少とのこと。
本書は、今こそ読むべき本、読まれるべき本と言えるでしょう。
岩波書店さ~ん、増刷とkindle版お願いします~。
(追記:現在、kindle版が販売されています。)
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